【友達の手書きイラスト③】~初心者におススメ!!ポスターカラーで描く手書きイラスト~

皆さん、こんにちは!
ポスターカラー大好きイラストレーターのすずきかずたかです。


ポスターカラーで描いた作品

今回は、宮田ボクシングジムでの僕の友達の新人プロボクサー、橋場大樹選手の試合の様子をイラストにしました。

 

橋場大樹選手について

橋場選手はボクシングを初めてまだ2年という超ニューフェイスの新人ボクサーです。
今回の試合が彼にとってはプロ第一戦でした。
結果は3-0の判定勝ち、プロデビュー戦を見事勝利で飾りました。

当日は僕も後楽園ホールに応援に行っていました。
いつも同じジムで一緒に練習している友達がプロデビュー戦で初勝利を飾ったのです。
これはもうお祝いするしかないでしょう。
僕のプロ選手へのお祝いの仕方は、その試合の一番良いシーンを絵に描いてプレゼントする事です。

少し前までは同じジムの選手が試合に出ている時は、勝手に席を移動して、リングサイドで写真を撮ったりしていました。
しかし、今は時代が時代ですから、大声を出しての応援も出来ませんし、勝手に席を移動する事も出来ません。
だから、リングサイドで勝った友達の決めのポーズを写真に撮るなどという事も出来なくなってしまいました。

そこで僕は、橋場選手本人に、「一番気に入っているシーンの写真を送って」と頼みました。
そうして橋場選手からLINEで送られてきたのが、この写真です。

送られてきた写真がモノクロだったので、僕はかえって嬉しくなりました。
初めから色付きの写真を見て描くよりも、自分のイメージで色塗りが出来るからです。

 

下描き

さて、まずいつものように下描きから始めます。
2B、4B、6Bなどの、芯が柔らかくて色の濃い鉛筆を使います。

前にも書いた事がありますが、このように、友達や知っている人の絵を描く時に一番重要なのは、「顔が似ている」という事です。
その方が描かれた本人は絶対に嬉しいものです。
なので、今回はいつものようにデッサンで下描きをするのではなく、トレースをする事にしました。

 

トレースとは

トレースとは、本来は元となる写真などの上に、トレーシングペーパーという薄い半透明の紙をのせて元の絵をなぞる作業のことを言います。
しかし、今回は橋場選手の顔を似せる事を最優先しつつ、勇猛果敢にパンチを決めているところを描くのが目的です。

 

なので、僕はまず写真をA3サイズで拡大コピーしました。
そして、そのコピーの裏に鉛筆の粉をこすりつけるように黒く塗っていきました。

この鉛筆を一面にこすりつけたコピーを、塗った面がケント紙と向かい合わせになるようにして、小さく切ったクラフトテープなどで止めます。
あまりテープを大きく貼ってしまうと、後で剥す時に苦労しますからね。

 

こうしてケント紙にテープでコピーを止めたら、コピーの上からボールペンなどで描く対象の輪郭を強くなぞります。
あくまで描く対象だけです。
客席にいる他のお客さんなどは今回は描かないので、2人の選手とリングの周りだけをなぞります。
この時、なぞるボールペンは黒ではなく赤などを使った方が、周りの色と同化せずに、もれなくなぞる事が出来ます。

 

写真ではわかりにくいですが、2人の選手とリングの輪郭をなぞり終えました。
なぞった部分だけ鉛筆の粉が付いて、それが下描きとなります。
これで今回の下描きは終わりです。

 

色塗り

ここからが本番です。
下描きをトレースでする場合、誰が描いてもほぼ同じ下描きになりますから、色の塗り方でオリジナリティを出していきます。
力んでオリジナリティを出そうとしなくても大丈夫です。
字の書き方が人それぞれ違うように、色の塗り方も人それぞれ違います。
その証拠に、同じ塗り絵に色を塗っても、全く同じに塗れる人は皆無に等しいです。

まして、ポスターカラーは元々塗った後の印象がレトロっぽさを感じさせる絵具です。
僕はファッションイラストで有名な飯田淳さんに作品を見て頂いた事がありますが、僕の絵に対して「とぼけた絵」という評価を頂きました。
もちろん誉め言葉です。
僕は意図的にとぼけた絵など描こうとは思っていません。
しかし、飯田淳さんの言葉を借りれば僕の絵はどれも「とぼけた」印象を持つ作品に仕上がっているのです。

そのくらい、本人が意識しなくても色の塗り方によってその人の特徴が現れるものなのです。


ファッションイラストの第1人者・飯田淳さん

 

 

 

まず、戦っている2人の選手を塗ります。
僕はセピア系の色が好きなので、人の肌を塗る時はいわゆる「肌色」は使わずに、セピア系に近いニッカ―のポスターカラーの「ネープルズイエロー」と言う色を使います。
2人のグローブも、僕はいつもなら赤とか青ではなく、もっとセピア系に近い色を使うのですが、今回は橋場選手のプロデビュー初勝利に敬意を表して、わかりやすく赤(カーマイン)と、青(セルリアンブルー)で塗りました。

 

 

 

トランクスや髪なども塗っていきます。
橋場選手の髪が黒いのはわかっていますが、それ以外の色はほとんど覚えていなかったので、僕の好きなセピア系の色を使わせて頂きました。

 

 

身体の部位同士の境目がわかるように、また、筋肉を強調する為に、ネープルズイエローの同系色で少し濃い目の「イエローオーカー」で影を付けていきました。
また、トランクスのしわや顔のパーツなどにも色を付けていきます。

 

実は僕はこの絵の元になった写真を橋場選手から貰った時、正直顔を似せて描く自信がありませんでした。
確かにポーズは相手の顔面をとらえているシーンでカッコいいのですが、顔が完全な横顔になっているので、特徴が出しにくいと思ったからです。
そこで僕は、橋場選手に「正面を向いた顔写真も送ってよ」と頼んでおきました。
正面の顔写真があれば、後から顔を似せるのに役立つと思ったからです。

 

ところが、そこで驚くべき事が2つありました。
ひとつ目は、橋場選手の顔が、普段僕が持っていたイメージよりもかなりのイケメンだった事です。
橋場選手本人にはたいへん失礼ですが、「あれ?こんなにイケメンだったかな??」としばらく考え込んでしまいました(笑)

 

 

もうひとつ驚いた事は、顔の色を塗った時に、一発で本人に似た顔に決まってしまったという事です。
僕も長く絵を描いて来ましたが、こういう事はとても珍しい事です。

せっかく橋場選手の顔が決まったので、これ以上顔はいじりたくありませんでした。
しかし、何かもうひとひねり欲しいと思いました。
いくら僕の絵が「とぼけた」絵であっても、ボクシングの試合を描いた絵にしては動きが少な過ぎると思ったのです。

 

そこで思いついたのは、相手の選手には悪かったのですが、実際よりも痛そうな顔をしてもらいました。
実物よりも額のしわや、口のゆがみ方をオーバーに描きました。
これで多少ボクシングのイラストらしくなったと思います。

 

まとめ

今回の様なケースでは、絵のモデルに顔を似せるという意味ではあまり参考になりませんでした。
通常はポスターカラーで何回も重ね塗りをして本人に似せていくのですが、それが一発で決まってしまったのですから。
しかし、ボクシングの試合で勝ったシーンのイラストですから、「一発で決まった」というのは縁起が良いと思いました。
また、もう少し動きが欲しいと思いましたが、せっかく決まった主役の顔をこれ以上いじりたくない、そういう時は、申し訳ありませんが、今回の相手選手のように、その他の部分を少しオーバーに描く事でバランスを取る事に余力を使うのも良いと思います。

 

また、今回は今までで始めてお見せした「トレース」と言う手法も使いました。
トレースは絵を描く上で決して邪道ではありません。
写真を見て描く、写す、トレースする、というのはむしろリアルな絵を描く時の王道と言っても良いと思います。
どんどん写真を見たり、トレースをするなどして、リアルな絵を描く練習をしてください。
イメージや記憶だけで描くよりも、確実に効果があります。

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