先輩マンガ家から学ぶ「手書きイラストの作風を確立する方法」~集めた資料を活かす~ 

皆さん、こんにちは!
ポスターカラー大好きイラストレーターのすずきかずたかです。


ポスターカラーで描いた作品

 絵はまずマネ

僕の大好きだった赤塚不二夫さん、藤子不二雄さん、手塚治虫さんといった、いわゆる「トキワ壮」から輩出された偉大なマンガ家の先生方が語っている「絵の描き方」のひとつに、次のような考え方があります(本当は手塚治虫さんは赤塚不二夫さんらの大先輩であり、一歩抜きん出た存在なのですが、僕がより多くの時間を共有したのは赤塚不二夫さんや藤子不二雄さんの作品なので、このような順番で書かせていただきます)。 

 

 

「マンガやイラストが写真と違う部分は、そこに「誇張」「省略」「抜き出し」がある事です。 『好きな作家の真似をする』という事は、無意識にその作家の「誇張」や「省略」、「抜き出し」を学んでいる事と同じです」 

 

 

マネをすることは絵を描く上で大切な練習法です。 しかし、そのタッチ(作風)はあくまでも他人のものであるという事を忘れてはなりません。
自分のタッチを確立するには、他の作家の真似だけでなく、実物や写真集からも参考となる見本や資料を集め、それを利用しながら絵を描く事です。 

 

 マネから自分のタッチ(作風)へ

ヘタだろうと人から何と言われようと、どんどん描いているうちに、自分なりの「誇張」「省略」「抜き出し」が生まれ、それがやがて自分のタッチになります。 


絵のモデルにしたランドローバー


僕なりのタッチのランドローバー

 

 

資料や写真をどんどん集める

写生やスケッチも重要な資料集めの方法ですが、それだけでイラストの対象や背景の資料となる絵を描いていたら膨大な時間がかかります。 その為にも、旅行先やスポーツ観戦などで気に入った場面、風景や街並みがあったら、マメに写真を撮ることは有効な手段です。 

また、読んだ本やネットの記事の中に気になる商品、風景、家の写真などがあれば、コピーしてファイルしたり、データ化してPCに保存しておくクセを付けましょう 

 

 

イラストやマンガの中の人物が着ている服や持ち物、部屋の中にある家具や小物類なども、描く絵のタイプによっていろいろ描き分けなくてはなりません 。いざという時にすぐに選べるように、日常生活でよく使う小物や家具、アクセサリーなどは、イラストの性格に合わせてすぐに描けるように、資料としてこまめに分類しておきます。 

 

海外の風景などを参考にしたい時でも、行きたい時にいつでも海外に行けるという人はそう多くはないでしょう。 だからこそ旅行先、特に海外旅行に行った時などには出来るだけたくさんの写真を撮っておくと、思わぬところで役に立ちます。 



すっかり観光地化したグアムの夜の風景

 

 

僕の大好きなイラストレーターの鈴木英人さんは、活動の初期にアメリカで膨大な数の写真を撮影しています。 そして、その写真をプロジェクターで投射し、ひたすら模写するとことから始めて、現在のオリジナルのタッチを確立されています。 



鈴木英人さん

鈴木英人さんの初期の作品

 

また、写真を撮るときは、同じ対象物をできるだけ一方向からの撮影だけではなく、いろいろな角度から撮っておくと描く時に便利です。 

もちろん自分の想像力だけで角度を変えて描ければ理想的ですが、どうしても記憶力と想像力だけではイメージができない時にそうした資料があると、長い目で見たときは別として、すぐに描かなくてはならないなどという場合には役に立ちます。 

 

 

集めた資料はいつどこでどう使うかわからないので、常にわかりやすく種類別に分類しておきます。PCでファイルごとに人物、動物、乗り物、映画などと分けて保存しておくと便利です。 

 

 

「宇宙戦艦ヤマト」などでメカものの第一人者と言われるマンガ家の松本零士さんは、ヨーロッパで収集してきた戦闘機の自動照準器を主役にした大作を描かれています。 



松本零士さん


松本零士さんの代表作「宇宙戦艦ヤマト」


松本零士さんの描いた自動照準器をはじめとしたメカの絵

何から何まで撮影しなくても、このように興味のあるものだけでも克明に資料を撮っておくと、自分が一番描きたいものを描く時にアイデアに困る事がありません。 

 

 資料に使われるのでなく、資料を取捨選択する

しかしその一方で、全てを資料を使って描くと不自然になる場合もあります。 既にあるものの写真や画像だけでは、新しく目にしたものや、工夫を加えた作品を描く事が難しいからです。 

 

 

そういう時こそ自分の想像力を活かして補うことが必要です。
せっかく集めた資料であっても、それをすべて使い切る必要はありません。
目的は資料を使うことではなく、描きたい絵を描くことだからです。
描きたい絵にマッチしない資料は、思い切って切り捨てる事も必要です。 

 

 

僕の大好きな俳優の松田優作さんは映画「野獣死すべし」の主人公・伊達邦彦役で主演しました。「野獣死すべし」はハードボイルド作家の第一人者・大藪晴彦さんの小説が原作です。
松田優作さんが主演する作品の前にも、仲代達矢さんや藤岡弘さんが主演して、原作に忠実なワイルドな伊達邦彦を主人公とした2本の「野獣死すべし」が作られています。
しかし松田優作さんが演じた伊達邦彦は病的で、幽霊のような、違う意味の不気味さを持った人物でした。
そうなると、同じ伊達邦彦を主人公とした作品であっても、趣味や住む家、身の回りの調度品などが主人公の雰囲気に合わせて違ってきます。 


仲代達也さん主演「野獣死すべし」


藤岡弘さん主演「野獣死すべし」


松田優作さん主演「野獣死すべし」

 

 

まとめ

これはひとつの例ですが、絵にも同じことが言えます。
同じものを題材にしても、どういう雰囲気の作品にしたいのか、描く人の考えで工夫の仕方が変わってきます。
そうした工夫でオリジナルに自分で変化をつけるのも、絵を描く楽しみのひとつです。 

 

 

題材がなければ絵は描けませんし、そのために集めた資料は優秀な調味料です。
最初は調味料と題材だけに頼って絵を描くのはアリです。
しかし、その繰り返しの中から、良い意味での「自分流の描きやすさ」を見つけた時に、初めて自分のタッチが確立したと言って良いと思います。 

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