先輩マンガ家から学ぶ手書きイラストでの動きの表現~映画鑑賞のススメ

皆さん、こんにちは!
ポスターカラー大好きイラストレーターのすずきかずたかです。


ポスターカラーで描いた作品

僕が強く影響を受けたマンガ家の赤塚不二夫さんや藤子不二雄さんらの絵に関する考え方は、イラストを描く上でも大きく共感できる部分が多くあります。 


赤塚不二夫さん

藤子不二雄さん


自分の描いた絵が何を描いたものなのか、自分以外の人が見た時にわからなければ、その絵は自分で楽しむ為だけの絵です。
しかし、似顔絵を描いた時に、誰が見てもそっくりに描かれていたら、その似顔絵を描いてもらった本人は間違いなく喜びます。

例は違いますが、僕の描く絵は意図しなくても「レトロっぽい」とよく言われます。
僕の絵がレトロっぽく見えるのは努力とは違うかもしれませんが、ただそっくりに描くだけでなく、その人なりの味や工夫を付け加えれば、それを見る人達は更に楽しんでくれるはずです。



レトロっぽいと言われる僕の作風 


現代はSNSなど発信の手段がいくらでもありますから、インターネットを利用してその作品を発信すれば、その作品を世界中の人が楽しんでくれる可能性があります。 


絵は本来描いた本人が楽しむだけでももちろん良いものです。
しかし、(プロになるかどうかは別にして)多くの人を楽しませたいなら、自分なりの味や工夫を付け加える事が必要です。 


赤塚不二夫さんや藤子不二雄さん達のマンガが面白いのは、描いた人が想像力を働かせて絵がユーモラスになっているからです。
多くのイラストレーターが描くイラストが、より多くの人を楽しませるのは、写実的な絵画と違い、描いた人の想像力、即ち持ち味や工夫が色濃く表現されているからです。
例えば、僕の大好きなイラストレーターの鈴木英人さんの作品は、一見リアルなタッチですが、本当はないはずの、車のボディとそのツヤの境目に黒い線が描き込まれており、鈴木英人さんの作品の特色のひとつとなっています。


鈴木英人さんの作品

 

 人間や物事を観察すると、そもそもその元の形がユーモラスである事が多いです。
マンガ・絵の始まりは大昔の人が描いた落書きです。
日本のマンガの始まりは、西暦607年に聖徳太子が建てた法隆寺金堂の屋根裏のらくがき人物像というのが定説になっています。 


法隆寺金堂の屋根裏のらくがき人物像

 

僕が愛してやまないマンガ家の方たちは、映画に追いつき追い越せと映画の表現方法を学んできました。
赤塚不二夫さん、石ノ森章太郎さん、藤子不二雄さん、いずれも毎日、学校の試験中でさえも映画を観に行っていました。 


僕の好きなマンガ家さん達が好んで観た映画①「七人の侍」

僕の好きなマンガ家さん達が好んで観た映画②「宇宙戦争」

 

 それが起源かどうかはわかりませんが、映画とマンガには共通の用語というものが多く存在します。
例を挙げると、
・アップ 対象に近づいて描く
・アングル 対象をどの角度から描くか
・コスチューム 人物の服装
・シルエット 影絵
・バストアップ 上半身だけの絵
・ロング 対象を遠くから描く=アップの反対 

 これは、マンガがいかに映画の手法を学び、それを取り入れてきたかの証拠といえます。
イラストを描く時も同じことが言えます。 

写真やモデルを見ながら描くのはもちろん良い事なのですが、見たそのままだけを描くのでは想像力のある絵は描けません。 

例えば、魚が泳いでいる画像を見てイラストを描いた時に、見えたままだけを絵に描くのではなく、「その魚を下から見たらどう見えるのだろう?」という事を想像力を働かせながら描けるようになると、絵を描く為の想像力はどんどん広がります。

その想像力をつけるのに一番適しているのが、「映画を観る」という事です。
映画を観る事はマンガやイラストの勉強になります。 


少し話がそれますが、同じもの、例えば同じ映画や同じ風景を描いても違うタッチ(作風)になるのは、その人の対象に対する記憶の強弱によって「誇張」があるからです。
見たものをそのまま描くのではなく、一旦見た人それぞれの頭の中で情報処理が行われ、印象深い部分が「抜き出され」、どうでもいい部分は「省略」されて、その人なりの絵にまとめられるという作業が行なわれるからです。
この「誇張」「省略」「抜き出し」の過程で、人によって作風の違いが生まれます。 

 

 映画やアニメと違って、描いた絵は動きません、
でも描いた絵には実物のように動いて欲しいものです。 



手塚治虫さんの代表作でアニメにもなった「鉄腕アトム」

絵描きとしては、一瞬の動きを見せる事で、見ている人にその前後の動きを想像してもらうという大きな義務と大きな醍醐味があります。 

その為にも、ひとつの対象を見たままだけではなく、あらゆるアングルから描きこなせるようになる必要があります。 

 

人間の土台はガイコツです。
骨がある事によって、人間独特の動きが出来るのです。
人間の動きを表現する為には、端的に言えば関節の部分で腕や足を決められた方向に前後させるだけです。 

例えば、歩きと走りの違いを絵で表現するとします。
歩きはほぼ身体が直立で、左右どちらかの足が地面についています。
走りだすと前傾姿勢になり、両足は高く地面を離れます。

同じように立つ、座る、踊る、転ぶ、ケンカするなどいろいろな動作を描いてみます。
自分で動いてみて手足の曲がり方や首の位置などを確認しながら描くと動作の特徴が更によくわかります。 


赤塚不二夫さんや藤子不二雄さんが現役だった頃は、こうしたリアルな動きを絵にする為には映画が格好の教材でした。
それは今でも変わらないと思います。
それでもわからない部分は、実際に自分が動いてみて補完する。 

僕の大好きな赤塚不二夫さんや同世代の殆んどのマンガ家さん達は、映画をメインの教材としていました。
今ではネットによる動画配信など、教材はさらに増えています。
しかし、多彩なキャラクターが、空想的な動きも含めて大きなスクリーンで観られるという意味では、今でも映画に勝る教材はないと思います。 



大ヒットした庵野秀明監督の「シン・ゴジラ

永遠の名作と言っても過言ではないジェームズキャメロン監督の「タイタニック

好きな映画をたくさん観て、いろいろな表現ができるようになる。
まさに趣味と実益を兼ねた一石二鳥の絵の勉強法ですね。

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